第7章 因縁の対決、再び | 佐藤政大 公式サイト

第7章 因縁の対決、再び

全日本に向けて最後のテストマッチとなったのが、猛暑の最中の8月に兵庫県で争われた「関西オープンテニス選手権大会 ベテランの部」です。シングルスだけでも、通常の倍の64人が出場するこの大会の仮想ライバルは、大阪のテニススクールで現役のコーチとしても活躍する右近貴志選手。

全日本ベテランダブルスで何度も優勝した経験を持つ関西屈指のプレイヤーで、プレッシャーに強く、どんな試合でも最後まで打ちきることができる実力派です。全日本ベテランシングルスで優勝するためにも、必ず攻略しておきたい相手なのですが、僕とは逆ブロックでの組み合わせだったため、彼と当たるには互いに決勝まで勝ち進まなくてはなりません。そうとなれば僕も気合い充分、一戦一戦に着実に勝利を収めることに徹しました。そして迎えた準々決勝。右近選手との対戦を目指す僕の前に立ちはだかったのは、なんと昨年の全日本で屈辱的な敗北を喫した長谷川尚之選手でした。

いざ試合が始まると、第1セットは6-7(3)で落としてしまい、一瞬「敗北」の文字が頭をよぎります。しかし昨年とは違う自分を信じて、「いま頑張らなくていつ頑張るんだ!」と気持ちを引き締め直しました。積極的に足を使ってコートを走り回り、第2セットでは7-5と挽回。第3セットも6-2と押さえ込むことに成功しました。昨年と同様にフルセットまで縺(もつ)れ込む展開とはなりましたが、今度は雪辱を果たしたのです。

 続く準決勝は、4月の「東海毎日ベテランテニス選手権大会」で惜敗した松枝つとむ選手との再びの対決。気の抜けない展開となりましたが、前回の試合で得た「フットワーク」と「フォアハンド」の問題を克服した僕は、第1セットを6-4で先取。第2セットも7-5で逃げ切り、なんとか辛勝することができました。

 

 勢いに乗った僕は、さあ、いよいよ次は念願の右近選手との決勝戦!…と意気込んでいたのですが、隣のコートで行われた試合で、右近選手はまさかの準決勝敗退。その右近選手を破って決勝まで勝ち上がったのが、佐藤仁則選手。僕よりも2歳若く、全日本選手権35歳以上で3位入賞経験を持つ選手です。この大会での彼は、以前にも増してバックストロークが冴えに冴えていましたから、僕も最大限の警戒体勢で迎え撃ちます。重苦しい雰囲気の中で始まったゲームは、何とか押しぎみの展開に持ち込みつつも、それ以上に粘り強さを見せる相手のペースにはまってしまい、第1セットは4-6で奪われます。第2セットでは6-1と流れを取り戻すものの、第3セットでは再び相手の勢いに押され5-7と根負け。悔しい結果に終わりはしましたが、全てを出し切ってのことです。ここは前向きに受け止め、後は次を目指して頑張るしかありません。

 

 残念だったのは、この大会で右近選手と対戦できなかったことです。正直なところ「これは痛手だなぁ」と感じていました。しかしこれが大本命である全日本ベテランにおいて、僕に有利な展開をもたらしてくれることになろうとは。もちろんこの時の僕は、そのことは夢にも思っていなかったのですが…。

 

 というのも、この関西オープンで準優勝したことでランキングポイントを獲得し、全日本ベテラン選手権の出場権を勝ち取れたのですが、もし優勝していればランキング8位となり、シード権も得ていたことになります。ですがもし、第8シードで出場していたら、右近選手をはじめ今まで対戦していない有力選手がひしめくブロックでの出場となっていたのです。けれど今回、関西オープンの決勝で負けたことで全日本ノーシードが確定し、その結果、道田選手や堀口選手、長谷川選手や佐藤仁則選手など、ここ数カ月で対戦してきたライバル達と同じブロックからのエントリーとなったのです。僕がこの事実を知ったのは、全日本のトーナメント表が組み上がった9月中旬のこと。これも運命の導きなのでしょうか、あまりの偶然に恐ろしいほどの因縁を感じたのでした。

 

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