2007年10月10日、僕にとって初めての「全日本ベテランテニス選手権」が終了しました。目標としていた「優勝」には手が届かず、ほろ苦いデビュー戦となりましたが、これで僕のチャレンジに終わりはありません。
ベテランテニス初挑戦の総仕上げとして、11月3日から開催される「全日本ローンコートベテランテニス大会」に参戦したのです。
この大会は、日本初の本格的天然芝生コートとして有名な、グラスコート佐賀(当時の名称はウィンブルドン九州)を会場に開催されるトーナメントです。僕の35年のテニス人生の中でも、生まれて初めての天然芝のコート。子どもの頃から「いつかは行ってみたい」と思っていた憧れの場所です。
天然芝コートというと、テニス4大大会の中でも最も歴史が古く、権威があるウィンブルドン(全英オープン)をイメージされる方も多いと思います。芝コートは、まさに“テニスの原点”ともいうべきサーフェスです。
ですが天然芝コートが初めての僕にとっては、厄介な面も少なくありません。芝のクッション性により球速が早い上に、バウンドは低く不規則。ボールが弾まないため腰を落とす頻度が高くなり、膝への負担がかかります。足元も柔らかく不安定なので、不慣れな僕はタフな戦い方を強いられました。
とはいえ、気分はまさにウインブルドン。大会開始直後はコート特性の違いに戸惑いつつも、今までとは全く違う試合展開はとても楽しいものでした。ボールが弾まないからこそ、短いショートボールや高くふわっと浮かせたロブが効果的に決まりましたし、クッション性を生かしたジャンピングボレーも存分にできました。
何より、ラケットでボールをコートに打ち返すというシンプルさが、“テニスの原点”を思い起こさせてくれたのです。スピードやバウンドの不規則性も、「コートが生きている」感じがあって気持ちが良い。子どもの頃、原っぱでボールを打ち合って遊んでいた時と同じ感覚が甦(よみがえ)ってきます。
ただただ童心に帰って思い切り楽しんで戦った結果、なんと初出場ながら優勝を飾ることができました。
それだけではありません。「毎トー」の420、「関西オープン」の560に、「全日本ベテラン」ベスト4で獲得した270ポイント、この大会の優勝で手に入れた630ポイントがプラスされ、35歳以上のカテゴリーでランキング首位に立つことができたのです。
とても誇らしいことでした。ですがその一方で、どこか釈然としない感情も覚えました。というのも、全日本ベテランで優勝していないのにランキング1位を獲得してしまったことに、心から喜べない複雑な気持ちがあったのです。
1位になったとはいえ、現実には自分よりも強い人がたくさんいるんです。だから、やっぱり全日本ベテランで優勝したい。全国優勝とランキング1位とでは、その重みが違います。
真の「日本一」になるには、もっともっと上を目指して進み続ける必要があるのは明確でした。この違和感をバネに、来年も日本一を目指そう。来年が無理なら、その翌年も。今この瞬間は、終わらない旅のスタート地点に過ぎない。そんな気持ちが、僕の中に強く湧き上がってきたのです。