第62話 不完全な状態で臨んだ2009年 | 佐藤政大 公式サイト

2009年は地方大会の試合出場は諦め、目標を「全日本ベテラン」1本に絞ることにしました。当然ながらベテランポイントの獲得もできませんが、仕方のない事情がそこにはありました。

というのも、レッスンを受託していたTスポーツクラブから、この年の春で契約を中途解除される事態に陥ってしまっていたからです。

まさにその時、Vsignは倒産の危機を迎えてしまいました。生き残るために僕とスタッフたちが導き出した答えは、自分たちで新スクールを立ち上げることでした。その中で当面の経営を回すには、僕のレッスン数を増やして稼ぐしかありません。

Tスポーツクラブ時代は300人の生徒さんを担当していましたが、新スクールに移ってくれた生徒さんはわずか30人足らず。これではとても安定した会社運営は不可能です。

まずは生徒数を増やさなくてはなりませんから、そのための活動にも取り組む必要がありました。加えて設立に関する諸手続きや資金の調達、スタッフの育成などの業務にも時間が割かざるを得ません。これらの業務に毎日朝から晩まで追われ、ほとんど自分の練習ができない状態でした。

本当のところ、この年は全日本ベテラン出場自体を取りやめ、事務仕事と生徒さんの指導を優先しようと考えていました。しかし子どもたちや保護者の方々、それにスタッフたちが声をそろえて「今年も優勝めざして頑張ってください!」と励ましてくれるのです。僕はその声に押され、「全日本ベテラン」だけは出場を決意したというわけです。

そのような中で迎えた10月の大会本番。昨年は第1シードからの出場でしたが、ベテランポイントゼロのこの年は、ノーシードでの参戦となりました。

このとき僕は、過密なスケジュールに追われ、ほぼ丸1年ほど公式戦から遠ざかっていました。試合の感覚も鈍っていましたし、精神的にも技術的にも不安定な状態です。黒田君とダブルスを組むのさえ久しぶりで、文字通り「ぶっつけ本番」での挑戦でした。

それでもダブルス初戦は、どうにか6-2・6-3で勝利を収めました。しかし続く2回戦では、昨年も2回戦で顔を合わせ、1ゲームを争う競り合いの末に辛勝した強敵が僕たちの前に立ちはだかります。今大会で第1シードを勝ち取った、右近貴志・綿谷義樹ペアです。

調整不足の僕たちは、ダブルス巧者を相手に全く歯が立ちません。最後まで流れを掴(つか)めないまま、2-6・3-6のストレートであっけなく撃破されてしまいました。僕たちペアは前年覇者でありながら、2回戦敗退という屈辱を喫したのです。この後、右近・綿谷ペアは残り3試合をストレートで勝ち上がり、見事に初優勝を飾りました。

シングルスでも苦戦は続きました。初戦は同じサトウグリーンテニスクラブ所属の高橋良昌選手との顔合わせ。互いに手の内を知る者同士の対戦となり、試合は第1セットからタイブレークに突入、かろうじて7-6(5)で切り抜けたものの、第2セットも競り合いとなり、7-5と僅差でどうにか振り切ることができました。

続く2回戦は、昨年大会でフルセットの末に制した横山督選手と再びのマッチアップです。横山選手は長いラリーを粘り強く繋(つな)ぎ、自分の土俵に持ち込むストロークプレーヤータイプ。メンタル・フィジカルともに限界寸前だった僕にとって、とても嫌な対戦相手です。一筋縄ではいかないことは、火を見るより明らかでした。

その不安は的中し、第1セットは6-3、第2セットは4-6の取り合いとなり、試合はまたしてもフルセットに絡(もつ)れ込みます。迎えた第3セットも、やはり1ゲームを争う展開となりました。しかしなんとか反撃を振りきり、6-3で勝利をもぎ取ることに成功しました。

次はいよいよ準々決勝です。相手は一般プロとしても活躍している強豪、白砂智章選手。難敵ですが、これまでの2試合で徐々に実戦の感覚を取り戻してきたこともあり、第1セットは6-3で先制することに成功。続く第2セットは一進一退の攻防となりましたが、かろうじて1ゲームを守り切り、6-3で勝利をものすることができました。

準決勝でぶつかったのは前年の覇者、第1シードの谷川選手です。昨年の準決勝でも対戦し、苦杯を喫した相手です。今回こそ雪辱を晴らしたいところですが、既に体力は限界に達しつつありました。

シングルスだけに絞って大会に挑む谷川選手に対し、ダブルス同時出場の僕はそもそも体力面で不利。日々のトレーニング不足と連戦の疲労の蓄積も重なり、全身が激しい筋肉痛に見舞われていました。それだけではありません。新スクール立ち上げのストレスが、メンタル面にも悪影響を及ぼしていました。

案の定、試合は開始直後から谷川選手が優位に立ち、第1セットを6-3で落としてしまいます。ボールを追おうとすると、全身の筋肉が悲鳴を上げます。重要な場面だと分かっていても、集中力がキープできません。

体力・気力ともに追い詰められた中で迎えた第2セット、何がなんでも試合の流れを変えようと試みますが、谷川選手は決して主導権を渡しません。巧みな戦術で僕の攻撃を封じ込め、ブレークバックするチャンスがあっても奪いきれず、結局6-2のストレート負けを喫しました。そして決勝へと勝ち上がった谷川選手は、相手選手を7-5・6-3で下し2大会連続優勝を飾ったのです。

2009年の「全日本ベテラン」は、こうしてあっけなく終了となりました。ダブルスは屈辱の2回戦、シングルスは昨年と同様にベスト4での敗退です。

まあ今から思えば、ベストとは程遠い状態の中で、よくここまで戦えたものだと思います。チャンスを生かしきれなかった悔しさもありますが、この経験がきっと来季に生きてくるはずです。

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